変形性膝関節症
年を取るにつれて膝の軟骨がすり減り、膝関節が痛かったり、膝の形が変形してしまい、正座はもちろん、歩くことすらままならなくなってしまいます。
もう年だから仕方がない。治らないから仕方がないと思われている方は多いはずです。
確かに変形してしまった膝関節を元の正常な形に戻すことは現代医学では不可能です。すり減った軟骨も元に戻ることはありません。
ですが、変形の進行を抑えたり、痛みを軽減させることが可能です。
人は環境に対し適応できる生き物です。
変形した膝に合わせて体は作り替わる。その時にその他の部位に可能な限り影響を及ぼさないためにも体を整えることが重要となります。
変形性膝関節症のメカニズム
加齢に伴い膝関節を構成する大腿骨と脛骨の軟骨が摩耗によりすり減ります。その間に位置する半月板も同様にすり減るため、骨同士がぶつかり合い変形を起こします。
この時、すり減ったことにより骨棘が形成され、炎症症状を起こします。
そこから更に軟骨がすり減り、やがて関節の間の隙間が狭小化し、骨の実質まで変形し始めます。
すると膝だけでなく、下腿骨が湾曲変形し、O脚化が進み、正座はもちろん、歩いたり立ち上がることさえ困難になってしまいます。
重要なのは変形したものを治すのではなく、変形の進行を遅らせることと、変形に対して体を順応させることにあります。
変形性膝関節症になりやすい方
この要因がある方は将来変形性膝関節症になりやすいです。
- 体重過多
- 過去に膝関節の靭帯損傷や半月板損傷の既往歴がある
- 猫背の方
- O脚、X脚の方
- 女性
- 親族に変形性膝関節症持ちの方がいる
- 骨粗鬆症の方
- 栄養不足(主にタンパク質、カルシウム、ビタミンD不足)
- 運動不足の方
- 膝を酷使する作業をする方(力仕事やスポーツ選手)
1.体重過多
体重が重い人の方が関節にかかる圧力は高い状態ですので、膝の摩耗も早いです。
2.過去に膝関節の靭帯損傷や半月板損傷の既往がある方
過去に膝関節の内外側の側副靭帯や前十字・後十字靭帯損傷、半月板損傷の既往がある方は膝に既にダメージを受けているため、変形のリスクが高まります。
特に内側側副靭帯、前十字靭帯、内側半月板損傷の三つに関しては変形のリスクが高くなります。これは膝関節が内側に入りやすい解剖学的特徴を持ち、内側半月板と内側側副靭帯は一部くっついているため、同時に痛めやすいです。
前十字靭帯も痛めやすく、かつ膝の安定性に重要な組織であり、一度損傷し断裂してしまうと再建手術も難しいため、変形性膝関節症のリスクが高くなります。
3.猫背の方
猫背は背中が丸ることにより、頭が下がり、目線を確保するために代償動作として膝を曲げるようになります。その結果、膝にかかる圧力が増加し、関節が固まってしまい変形し始めてしまいます。
猫背矯正に関してはこちらをご覧ください。
猫背矯正治療
猫背の弊害〈変形性膝関節症〉
4.O脚・X脚の方
O脚の方は下腿骨が外側へとたわみ、膝関節の内側同士が接触しやすくなってしまいます。また体重が足にかかる時に下腿骨がたわんでいることにより、膝に外側へ行く力が加わり、逆に膝関節の内側は狭小化し、圧力がかかってしまいます。
逆にX脚の方は膝関節の外側が狭小化し、外側の変形をきたしやすいです。
5.女性
男性よりも女性の方が変形性膝関節症になりやすい性差があります。これは女性ホルモンが関与し、女性ホルモンの一部であるエストロゲンが骨代謝に関与しているためです。
女性は妊娠出産をはじめ、閉経に伴い女性ホルモンの分泌量が急激に少なくなるため、骨代謝に関与してしまい、骨粗鬆症になってしまいます。
骨粗鬆症になれば当然骨がもろくなり、変形もしやすくなってしまいます。
6.親族に変形性膝関節症持ちの方がいる
自分のお父さんやお母さんが変形性膝関節症持ちの方は、子も変形性膝関節症になりやすいです。これは遺伝的要素と生活的要素があります。
遺伝的要素に関しては骨格です。両親がO脚器質かつ猫背であれば、子も当然その気質を持つため、変形リスクが高いです。
生活的要素に関しては日頃の生活リズムや食生活が似通るため、例えば食事量が多く恰幅がいい体形の方は子もその食生活で育つため、恰幅が良くなる可能性が高いです。
体重過多の件でも書きましたが、体重が重ければ重いほど膝にかかる圧力が増大するため、変形のリスクが高くなります。
7.骨粗鬆症の方
女性のところでもお伝えしましたが、骨粗鬆症になれば骨がもろくなるため、骨もたわみやすく、変形が起こりやすいです。
骨粗鬆症の方は食事のバランスが悪いことと運動不足、そして日光不足が挙げられます。
骨はタンパク質とカルシウム、ビタミンDなどの栄養素が必要不可欠です。お年を召してくると食事量が低くなり、必要となるたんぱく質の量やその他の栄養素が少ないことが多いです。
また、活動量も少なくなり、日光を浴びなくなります。日光を浴びないとビタミンDが活性型ビタミンDに変化せず、骨代謝に使われないため、骨がもろくなってしまいます。
そして運動。骨は適度な刺激がかかることで強くなります。運動不足になれば、体はそれに順応し、骨の強度を上げないようにしていきます。
ですのでしっかりとした栄養、程よい運動、そして日光浴がとても大切になります。
8.栄養素不足(主にタンパク質、カルシウム、ビタミンD不足)
骨はタンパク質の一種であるコラーゲンの柱にリン酸カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが必要となります。
建物でいうとコラーゲンが鉄筋、リン酸カルシウムやマグネシウム、ナトリウムなどがセメントの役目を持ちます。
そこに活性型ビタミンDにより腸管からカルシウムを吸収を高め、骨の石灰化を促進させ骨密度を高めてくれます。
これらの栄養素が不足すると骨粗鬆症になり、骨の変形が進んでいってしまいます。
9.運動不足の方
運動不足においちると体にストレスがなくなります。一見するとストレスがなくなるのだから良いじゃないかと思われがちですが、体は全くストレスがかからないと筋肉は落ちますし、骨自体もこれ以上骨を強くする必要がないため、廃用性萎縮を起こします。
骨は長軸圧のストレスがかかることで骨を強くしようとする反応が出て、結果として骨代謝を促進させます。
ですので、運動は骨の強度を高めることに非常に重要な要素です。
10.膝を酷使する作業をする方
力仕事の方やスポーツを活発に行っている方は当然膝にかかる圧力は高まり、軟骨をすり減らしてしまいます。
いくら筋力があったとしても骨を鍛えることはできません。
こんな症状が出始めたら要注意
- 最近O脚、X脚が気になり始めた
- 猫背のせいか膝が伸びづらくなってきた
- 立ち上がる際や歩き始めに膝が痛くなるが、その後は大丈夫
- 階段の上り下りの際に膝が痛む
- 周りから膝が伸びてない、猫背だよと指摘されている
当院での治療
変形の度合いを診て施術方針が異なります。炎症が強い場合はその炎症を抑えるように消炎剤によるマッサージ、膝関節の調整、必要に応じて超音波治療器を活用していきます。また、変形に伴い体のバランスが崩れるため、全身の関節調整と手技によるマッサージを行います。
まだ症状として初期症状の場合は猫背矯正を勧めております。
変形性膝関節症の方の大半が猫背です。猫背になると膝の代償が多くなってくるため、それを防ぐために猫背を改善することが急務と考えております。
当院は患者様の体の状況、症状に応じて施術を変えて、その人にあった最善策の治療を受けて頂くよう心掛けております。
変形性膝関節症の治療の限界
最初にお伝えした通り、変形した膝を元の形に戻すことはできません。
あくまで変形を遅らせる、痛みを軽減させ、少しでも日常生活が楽に送れるようにすることが当院で行える治療の限界です。
よく変形性膝関節症は治るのでしょうかという問い合わせがありますが、当院ではきっぱりと変形したものは治せませんとお答えしております。
希望を持たせるように言うのは簡単ですが、プロフェッショナルとしてその姿勢は患者さんに対して失礼ですし、限られた時間の中、当院にお越しして頂くので、安易なお言葉を投げかけることはしません。
数ある治療院の中、当院をお選びして頂いたからこそ、誠心誠意治療させて頂きますので、宜しくお願い致します。
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